健康志向でヘルシーな料理に関するトピックが増えている昨今、鶏肉を調理するにしても、脂の少ない胸肉やささみ肉を選ぶ人が増えています。
確かにジューシーなもも肉はどんな調理でもおいしくいただけますが、やはり脂に対する罪悪感がありますよね。カロリーやコレステロールを気にして、パサパサの胸肉やささみ肉を我慢して食べてはいませんか?
今回は鶏もも肉はもちろん、パサつきがちな胸肉やささみ肉をしっとりおいしく調理する方法をご紹介します!
目次
1.鶏もも肉を柔らかくする「ブライニング」効果
みなさんは「ブライニング」という手法をご存知ですか? ブライニングとは調理前の肉をブライン液に浸けておくことをいいます。
そもそもブライニングってなに?
水に対し5%程度の塩と砂糖を溶かしたものを「ブライン液」といいます。このブライン液に食材を浸けておくことを「ブライニング」といいます。水100ccの場合、塩と砂糖の分量は5gになります。
ブライニングすることによって、調理過程で肉の水分や塩分が過度に失われるのを防ぐだけでなく、たんぱく質の性質を変えて柔らかな食感に仕上がるというメリットがあります。
実践!ブライニングの効果はいかに
水100mlに対し塩・砂糖5g
さっそく鶏もも肉をブライン液に浸けてみました。今回、風味付けのために粗びきのブラックペッパーとローリエを2枚入れています。胸肉とささみ肉にも同じ条件で風味付けをします。
一般的にブライニングは、最短で30分、長くても一日漬け込んでおけば十分といわれています。今回は1日ブライン液に浸けておきました。
鶏もも肉がジューシーになる焼き方
こちらが丸一日ブライン液に浸けておいた鶏もも肉。見た目は浸ける前と変わりません。
いよいよ肉をソテーしていきますが、皮下にたっぷりの脂肪があるもも肉をヘルシーかつおいしく仕上げるために、フライパンには脂をひかず皮目から弱火でじっくり火を通していきます。
肉の水気をしっかり拭き取ってからフライパンにそっと置いて、くっつかないよう何度かゆすってあげてください。
弱火でじっくり焼いていくと、写真のように油がじわじわとフライパンにたまっていきます。
もも肉の脂は調理油として再利用しよう
鶏もも肉から出た脂はキッチンペーパーなどで拭き取っても構いませんが、調理油としても使えるので、保存ビンなどに移し、再利用するのもおすすめです。
鶏の脂には旨み成分がたくさん含まれています。中華料理などに使えばより香り豊かに仕上がるでしょう。
鶏もも肉のソテーはきつね色が合図
皮の脂が抜けてきつね色になってくると、カリカリになってきているのが分かると思います。このきつね色が合図。肉の半分以上まで火が通ったくらいのところでひっくり返します。
この“パリッとした皮”こそ、鶏もも肉の醍醐味。徹底的に脂を抜いた結果です。
ここからは、中までしっかり火が通るように(かといって加熱し過ぎて肉質が硬くならないように)弱火でじっくり火を通していきます。
これで皮はパリパリ、中はジューシー。鶏もも肉のソテーの完成です。
2.パサパサの鶏胸肉がひと工夫でしっとりに!
鶏胸肉はどうしてパサつくの?
鶏胸肉はもも肉と比べて脂肪分が少ないため、加熱とともに水分が失われやすい傾向があります。「鶏胸肉はパサつく」と感じる人が多い理由は、調理によって肉の水分が失われてしまっているからなんです。
パサつきを防ぐためには?
重曹水:水100に対し3g
パサつきは“重曹を溶かした水(重曹水)に浸けることで防げます。重曹にはたんぱく質を柔らかくする効果があるとされており、特にパサつきがちな鶏胸肉にはうってつけです。
今回は3種のお肉の食べ比べということで、胸肉にもコショウとローリエで風味を加え、鶏もも肉同様ソテーします。
※重曹は料理用のものをご使用ください。仕様する量は水に対して1~2%程度で大丈夫です。
鶏胸肉をしっとりソテーする方法
水分が失われやすい鶏胸肉は、長時間強火にかけるとパサついてしまいます。
まずは皮目から弱火でじっくり焼き、皮がこんがり焼き上がったらひっくり返して、中火で3~5分ほど焼き中まで火を通します。焦げそうな場合は火加減を調整してくださいね。
火が通ったらフライパンから取り出し、アルミホイルに包んで10~15分程度休ませます。鶏もも肉と同様、フライパンにたまった脂は取り除くか、保存ビンにため調理油として使ってください。
3.料理酒の力でしっとり!ささみ肉の調理法
料理酒:酒と水=1:1
最後はささみ肉です。ささみ肉もやはりパサつきやすく、硬くなりやすい部位なので、おいしく調理するにはコツが必要です。胸肉同様、脂肪分が少ないため水分が失われやすく、ソテーにはあまり向かない部位といえます。
ささみ肉を料理酒に浸けてジューシーなソテーに
硬くなりがちなささみ肉をしっとり仕上げるには、料理酒に浸けるのがおすすめ。アルコールには保水効果があるとされており、肉のたんぱく質をしっとりさせてくれます。フライパンを使ってソテーしますが、最終的にフライパンにフタをして蒸し焼きにすることでしっとりと仕上げます。
ささみ肉に火の通し過ぎは厳禁。特にソテーにする場合は弱火~中火で。火加減に十分気をつけてください。
熱したフライパンで焼き始めるよりは、加熱する前のフライパンに肉を置き、コールドスタートさせるのも火の通し過ぎや火入れのムラを防ぐのに効果的です。
こんなに違うの⁉ 個性的な3種のソテー
ブライン液に浸けた鶏もも肉のソテー
皮はパリッと、中はふっくらに仕上がりました。焼き加減もさることながら、やはりブライニングしたもも肉はしっとりとしています。パリッとした皮とジューシーな肉は、塩コショウのシンプルな味つけでも十分おいしくいただけます。
ブライニングの効果は明らかで、ジューシーさが失われず、鶏もも肉独特の臭みもなく理想的なソテーになりました。
重曹水に浸けた鶏胸肉のソテー
切り口を見ていただけばお分かりいただけると思いますが、肉質がずいぶんと変わっています。食感も「え⁉」と思わず声が出てしまうほどの変貌ぶりで、パサパサ感はまったくありません。
それどころか、まるで鶏ハムのようにしっとり、プルンプルンに仕上がっています。重曹水の効果で、とても胸肉とは思えない仕上がりになりました。
料理酒に浸けたささみ肉のソテー
料理酒に浸けたささみ肉はしっとりとした仕上がりに。ソテーしたにもかかわらず、ハムのようになめらかな食感です。胸肉がプルンプルンとした肉質になったのに対し、こちらは繊維質を残したまま全体がしっとり柔らかくなった印象でしょうか。
4.知れば知るほど奥が深い肉料理の世界
今回はブライニングと重曹水、料理酒を使いましたが、塩麴や香味野菜などに含まれる消化酵素などを使っても同様の効果が期待できます。もちろん塩麴や野菜などにはそれぞれ独特の風味があり、用途によって手法を変えることで料理の幅はグンと広がるでしょう。
また、焼き方もソテーだけでなくフランベやアロゼ、コンフィなどを視野に入れれば、レシピの数はまさに無限大。簡単だけど奥が深い肉料理の世界、ご家庭で気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか?