お酒のおつまみとしてよく好まれる「イカの塩辛」。発酵食品のひとつであり、ごはんのおともやじゃがバターのトッピングとしても活躍してくれる食材です。

塩分が強いことから、あまり健康にいいイメージを持っている方が多くないかもしれません。しかし、イカの塩辛には健康に嬉しい栄養素が含まれています。そんなイカの塩辛の歴史や生産地とともに、イカの塩辛に含まれる栄養素についてご紹介します。

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イカの塩辛ってなに?


出典:Wikipedia
そもそもイカの塩辛とは、生のイカの身や内臓を塩漬けにし、素材自体が持つ酵素や微生物によって発酵させた食品です。発酵を促進するために麹を入れたり、保存性を向上するために日本酒や唐辛子を入れることもあります。

また、塩辛にされる食材はイカだけではありません。魚を原材料として作られたものを「魚醤(うおびしお)」、鶏肉や獣肉を原材料として作られたものを「肉醤(ししびしお)」といいます。

主にイカの塩辛はおつまみやごはんのおともなど、副食食材として食べられることが多いですが、調味料として使用することもできます。最近ではパスタの味付けとして使われるなど、さまざまなアレンジレシピが登場しており、親しみやすい食材になりつつあります。

歴史

塩辛の歴史は古く、日本では昔から保存食として親しまれてきました。古くは飛鳥時代、694年〜710年の間に地方から税として贈られた品物の荷札の中に、「鮒醢(ししびしお)」と書かれたものがありました。これは魚のフナから作られた塩辛を意味する言葉で、これが日本における塩辛の文献的な初出であるといわれています。

また平安時代末期には、「今昔物語」の中に「塩辛」という現在使われるのと同じ文字が登場しています。ただ、これに関しては現在の「塩辛」と同じものを示す言葉であるかどうかを確認できていないのが実情です。確認できているのは江戸時代以降で、「日葡辞書」という文献に現在と同じ意味で「塩辛」という言葉が使われています。

生産地

塩辛の生産地は、北海道・宮城県・青森県の3道県がトップを占めています。いずれもイカの漁獲量が多く、イカを使った加工品のひとつとして塩辛の生産も盛んに行われているようです。特に北海道ではイカの漁獲量、塩辛の生産量がともに多く、全国の塩辛の生産量のうち約50%を占めています。

この他の都道府県でも、名産品としてイカの塩辛がつくられている地域があります。いずれも海に面していて、漁業が盛んな地域です。静岡県や兵庫県、長崎県でも地元で獲れたイカを使用した塩辛が生産されています。

また、神奈川県では江戸時代からイカの塩辛が生産されており、麹をいれた独特の味わいが人気となっています。同じく江戸時代からイカの塩辛が生産されていた富山県では、「黒作り」という塩辛が有名です。黒作りは、イカの塩辛にイカスミを入れた真っ黒な塩辛となっています。

イカの塩辛に含まれる栄養


イカの塩辛は生のイカを原料としており、新鮮なイカの栄養を豊富に含んでいます。リンや鉄、亜鉛などミネラルをはじめ、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンEなど、体の調子を整えるためのさまざまな微量栄養素を含みます。

鉄やビタミンB群であるビタミンB12、葉酸は貧血の予防・改善に役立ちます。ビタミンAは視力や皮膚・粘膜の正常維持、ビタミンB群であるナイアシンは体内の代謝に関与し、皮膚・粘膜の正常維持のために働きます。また、ビタミンEは抗酸化作用があり、細胞を健康に保ちアンチエイジングにも効果が期待できます。

さらに、これらのビタミン・ミネラルの他にも、イカの塩辛には健康に役立つ嬉しい栄養素が含まれています。代表的な3つの栄養素について、それぞれみていきましょう。

タウリン

ひとつめは「タウリン」です。栄養ドリンクなどによく配合されており、名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。タウリンはアミノ酸の一種で、身体の中ではほとんど作り出すことができない成分です。

そのため、食べ物から摂取する必要があります。タウリンには、血圧や血中コレステロール値を正常化する働きがあります。また、肝機能を助けてくれる働きもあります。

ベタイン

ふたつめは「ベタイン」です。ベタインもアミノ酸の一種であり、体内でアミノ酸代謝に関与します。イカをはじめ、タコやエビ、貝類などの魚介類に多く含まれています。ベタインは、血中コレステロール値を改善する効果があるといわれています。

コラーゲン

最後は、「コラーゲン」です。コラーゲンはタンパク質の一種で、皮膚のハリや弾力を維持しています。美容のためのドリンクや食品などに配合されていることもあり、有名な成分ですよね。

健康な肌・美肌を目指すためには、十分なタンパク質の摂取が必要不可欠です。タンパク質であるコラーゲンを摂取することで、健康な肌・美肌への効果が期待できます。また、発酵食品であるイカの塩辛の場合は、発酵によりコラーゲンが吸収されやすくなるともいわれています。

イカの塩辛は健康面でも効果が期待できる!?


イカの塩辛に含まれる栄養には、さまざまな種類と効果があることをご紹介しました。それらの栄養のおかげで、私たちの身体の健康にも嬉しい効果が期待できます。代表的な効果について、それぞれみていきましょう。

二日酔いの予防

イカの塩辛を食べることで、二日酔いの予防効果が期待できます。これは、イカの塩辛に含まれるタウリンのおかげです。タウリンには肝機能を助けてくれる働きがあるため、お酒を飲んだときにアルコールの分解を促進してくれます。そのため、二日酔いの予防につながるのです。そういった意味でも、お酒のおつまみとしてイカの塩辛を食べることは理にかなっているといえるでしょう。

口内炎の予防

イカの塩辛には、ナイアシンなどのビタミンB群が含まれています。ビタミンB群には、皮膚・粘膜を正常に保つ働きがあります。そのため、イカの塩辛を食べることで口内炎の予防や、口内炎の回復への効果が期待できるのです。

カロリーや塩分について


豊富な栄養が含まれており、健康への効果も期待できるイカの塩辛ですが、カロリーや塩分の量が気になるところです。それぞれどのくらい含まれているのか、みていきましょう。

カロリーはどれくらい?

イカの塩辛100gあたりでみると、エネルギー量は117kcalとなっています。生のスルメイカが100gあたり83kcalであるのと比較すると、イカの塩辛のほうが内臓まで含まれている分、やや高めのエネルギー量となっています。

とはいえ、お酒のおつまみとして揚げ物を食べることと比較すると、100gあたりで約1/3のエネルギー量に抑えることができます。そのうえ、一般的に食べられるイカの塩辛は、一度に小鉢1つ分くらいの分量であることが多いと考えられるため、カロリーはあまり気にする必要はなさそうです。

塩分は?

続いてイカの塩辛に含まれる塩分についてです。イカの塩辛100gあたり7.6gの塩分が含まれています。1日あたりの塩分摂取量は、男性で8.0g、女性で7.0g未満が目標とされています。

そのため、仮にイカの塩辛を小鉢1つ分(約30g)食べたとすると塩分量は約2.3gとなり、1日に摂取できる塩分量のおよそ1/3に達してしまいます。イカの塩辛には健康にいい栄養素が豊富に含まれているからといって食べすぎてしまうと、簡単に塩分が過剰になってしまうため注意が必要です。

おすすめの食べ方


イカの塩辛を食べるときは、そのままでおつまみとして食べたり、白いごはんと一緒に、あるいはじゃがバターのトッピングとして食べるなど、思いつくバリエーションは多くないのではないでしょうか?

そんなイカの塩辛も、少しの工夫で多様なバリエーションを楽しむことができるのです。イカの塩辛のおすすめの食べ方を、いくつかご紹介します。

イカの塩辛+トッピング

イカの塩辛に、トッピングをプラスしていただく方法です。イカの塩辛におすすめのトッピングは大根おろし、ネギ、一味唐辛子などです。他にも、せん切りにしたキュウリを加えてもさっぱりとおいしくいただくことができます。

また、イカの塩辛に納豆を混ぜるのもおすすめです。この中の食材から好きなものをひとつ選んでもいいですし、いくつかを組み合わせてオリジナルの食べ方を見つけるのも楽しいですね。

お茶漬け

お茶漬けのトッピングとして、イカの塩辛を加えるのもおすすめです。さっぱりと食事を済ませたいときにはもちろん、お酒の締めとしてもぴったりのメニューです。たっぷりのノリやネギなどを加えると、より風味が増しておいしくいただくことができます。

カナッペ風

カナッペとは、クラッカーやスライスしたバケットの上にチーズや果物、野菜などの具材をのせた料理のことです。洋食レストランなどで、前菜やワインなどのおつまみとしてよく提供されています。

イカの塩辛をカナッペ風にする場合は、お好みのクラッカーやバケットの上に、クリームチーズと合わせてのせるのがおすすめです。仕上げにパセリを散らすと、彩りもよくなりオシャレな一品になります。

パスタ

意外な組み合わせに思われるかもしれませんが、実はパスタの具材としてもイカの塩辛はぴったりなのです。イカの塩辛には塩味もあり、具材としてだけでなく調味料のひとつとしても活躍してくれます。

和風のパスタはもちろん、ペペロンチーノやクリームパスタなど、洋風のパスタのアクセントとしてもおすすめです。いつものパスタとは少し違った風味が楽しめるのではないでしょうか?

以上のように、イカの塩辛ひとつでさまざまな料理にアレンジすることができます。和食のイメージが強いイカの塩辛ですが、洋食にも合う食材です。この機会に、今まで挑戦したことのない食べ方にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

イカの塩辛は冷凍保存が可能!


イカの塩辛は一度に食べる量もあまり多くありません。そのため、「一瓶買ってもすぐに食べきれない…」ということもあるのではないでしょうか?そんなときは、冷凍保存しましょう。

イカの塩辛は発酵食品であるため、長期間置いておくと発酵が進んでしまいます。また、一度開封してしまうと雑菌や水分が入り傷みやすくなってしまいます。そのため、開封してから2~3日で食べきれない場合には、冷凍保存をしておきましょう。

冷凍保存するおくことで、発酵を防ぎ、雑菌などの繁殖も抑制することができます。

冷凍保存するときは、一度に食べる量に小分けしてラップに包み、ジッパー付きの保存袋などにいれて冷凍庫に入れましょう。できるだけ空気を抜いて密封することで、より風味や品質を保ちやすくなります。

解凍するときは、あらかじめ冷蔵庫に移してゆっくりと自然解凍するとよいでしょう。前日の夜や、当日の朝のうちに冷蔵庫に移しておくと、夜までには十分に解凍されているはずです。

イカの塩辛を美味しく上手に食べましょう!

イカの塩辛にはさまざまな栄養素が含まれており、健康への嬉しい効果も期待できることがわかりました。ただし、塩分も多いため食べ過ぎには注意が必要です。

また、ワンパターンになりがちなイカの塩辛も、アレンジ次第で多様な料理に変身させることができます。食べきれないときには冷凍保存でおいしさをキープしながら、イカの塩辛をいろいろな食べ方で楽しみましょう。

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