リンゴを冷蔵庫に入れていたら、近くにあった野菜や果物がいつもより早くしなびたり、熟したり、傷んでしまったという経験はありませんか。
これは、リンゴから放出されている「エチレンガス」が原因なんです。冷蔵庫内の野菜や果物をできるだけ長持ちするように、まずはエチレンガスについてご説明します。
エチレンガスとは?
エチレンガスとは、野菜や果物が発している「植物ホルモン」です。
特に、花が受粉し実ができるときや、実を熟したりさせるときに植物から多くのエチレンガスが放出され、成熟度を高めると言われています。
ですから、綺麗な花を咲かせたり、美味しい実をつけるために必要不可欠な物質と言えるのです。
一方で、植物は収穫後もエチレンガスを放出するため、実の腐敗にもつながってしまうやっかいな物質でもあります。
エチレンガスの排出量はリンゴがトップ
エチレンガスは野菜や果物によってその排出量は異なりますが、一番多く排出すると言われているのがリンゴです。
また、リンゴと同じバラ科の果物である桃や梨などのほか、野菜ではブロッコリーやアボカド、トマトなどでもエチレンガスを多く排出すると言われています。
そのため、これらの野菜や果物を冷蔵庫に入れるときには、特に他の野菜類が傷まないように気を付ける必要があります。
具体的には、エチレンガスを多く排出する植物をビニール袋に入れたり、保存用容器に入れておおくと、他の植物に影響を与えにくいでしょう。
エチレンガスは開花や熟成に使われている
ここまでは、どちらかと言うとエチレンガスの悪い面にフォーカスしてきましたが、エチレンガスの作用を上手に利用している場面もあるのでご紹介しましょう。
例えば、花やイチゴ、バナナの出荷、ポテトチップス用のジャガイモの保存などに利用されています。花やイチゴは出荷の最盛期は価格が安く、逆に出荷量の少ない時期には高値で取引されます。そこで、花やイチゴを早めに収穫し、エチレンガスが出ないようにします。
そして、高値になる頃にエチレンガスをかけて、一気に熟すようにして出荷するのです。
バナナは元々熟すのが早い果物なので、原産国では緑色の状態で収穫して日本に輸入しています。一旦熟し始めると虫が付きやすくなるのでそれを予防するためです。
エチレンガスには発芽を抑える作用もあるのですが、これはポテトチップス用のジャガイモの保存に利用されています。できるだけ糖度を上げず、発芽もしない状態でジャガイモを保存することができます。
エチレンガスの排出を止める方法はある?
エチレンガスの排出を止めるにはいくつかの方法があります。
ひとつ目は温度管理です。エチレンガスは8℃以上で排出量が多くなると言われているので、低温で保存することにより、植物からのエチレンガスを抑えることができるでしょう。
ふたつ目は、エチレンガスを吸収する作用をもつ製品を冷蔵庫(特に野菜室)に入れておく方法です。
エチレンガスの排出自体を抑制するものではありませんが、他の野菜などを守るという点では有効でしょう。いくつかの商品があるので利用してみるのもいいかもしれません。
みっつ目はホタテ貝やホッキ貝などを原料にして、野菜専用の洗剤をうたっている商品を利用することです。野菜などを購入後、一度洗浄しておくとエチレンガスの排出が抑えられて、野菜が傷みにくいと言われています。
エチレンガスは使い方次第
エチレンガスは野菜などの成熟を早めてしまう作用があるため、どうしても欠点ばかりに目がいってしまいますが、逆に熟していない果実と一緒にしておくと、より早く熟させることができます。
エチレンガスの特性をよく理解して、上手に付き合っていきましょう!